見出し画像

THE MODELを「越境」できる機会を求めて。SaaSメガベンチャーから転職した事業開発セールス・奥泉の挑戦

株式会社RightTouchは、2021年に株式会社プレイドからスピンオフしたスタートアップです。カスタマーサポート領域向けのWebサポートプラットフォーム「RightSupport by KARTE」「RightConnect by KARTE」などを提供。金融、通信業界を始め多くのエンタープライズ企業のみなさまにご利用いただいています。

今回はインサイドセールスの立ち上げやマーケット開拓に邁進し、セールスから事業開発の役割まで担って動いている奥泉(okkun)にインタビュー。RightTouchならではの「越境」するインサイドセールスの面白さややりがい、エンタープライズ市場へどう挑戦していくかを聞きました。

<プロフィール>
奥泉 琳太郎(おくいずみ りんたろう)

早稲田大学卒業後、新卒で株式会社ユーザベースに入社。ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)推進プラットフォームである「FORCAS」のマーケティング・インサイドセールスに従事。その後現在はプレイドグループの新会社RightTouchにて、インサイドセールスの立ち上げを含め、セールスマーケティング全般、新規領域の開拓を担当している。

転職のきっかけは「事業貢献実感の不足」。THE MODELの型に囚われない、市場創造に挑戦ができる環境が決め手に


——okkunさんといえば2024年1月にインサイドセールスの今後のあり方について書いたnoteが界隈でも話題になりました。新卒当初からインサイドセールスのキャリアを歩んでいると思いますが、経緯を教えてください。

大学生のときにユーザベースにインターンとして参画したのがはじまりです。最初はBtoBマーケティングの部門で、セミナーやイベントを企画・運営するサポートをしていました。半年ほど続けるなかで、自分自身で企画したり、今後のキャリアを広げたりしたいという気持ちは膨らむものの、成果になかなか繋がらず…。マーケチームの方に「クライアントの解像度を高めないと、成長が鈍化してしまうよ」と喝を入れられ、修行のような意味でインサイドセールスのチームに移りました。それ以降、インサイドセールスの奥深さに気づき、インサイドセールスを起点に役割を広げてきたといった流れです。

——転職を意識し始めたのはいつごろだったのでしょうか。

前職でインターンから正社員として入社し1年半ほど経つと、業務にも慣れ他のメンバーのスキルマネジメントも行うようになりました。しかし自分の役割が部分的・限定的に感じられ、事業貢献できていないのではと思うようになったんです。

——それはどうしてですか?

インサイドセールスのKPIの一つとして「アポイント数の獲得」が挙げられます。ただ、アポ数を達成したところで本当に受注、事業成長につながるのか、疑問だったんです。顧客接点を作っても、自分が話せるのは電話でのほんの数分。もちろんその後対応してくれるチームに良質なパスを送るために、できる限りの取り組みはしていました。ですが、顧客と接するのが限られた時間のため顧客解像度を高めづらいこと、どんなスキルが身についているのかの表現がしにくいことにも、徐々に不安を覚えました。

他の職種、たとえばカスタマーサクセスやフィールドセールスに社内異動することも考えたのですが、当時の自分には業務横断はレベルが高く、異動してゼロから成果を積み上げるうちに20代が終わってしまうかも、といった懸念を感じていました。

自分の得意なことや好きなことも定まっていなかったので、業務の幅や職種のバリエーションを広げられる環境に飛び込みたいなと転職活動を始めました。

——RightTouchはどんなきっかけで知ったんですか?

代表の野村からYOUTRUSTでスカウトメッセージをもらって知りました。プレイドやKARTEはよく知っていたのですが、正直RightTouchは聞いたことがなく、カスタマーサポート向けの事業というのもあまりイメージは湧きませんでした。

——なぜ話を聞いてみようと思ったんですか?

野村は営業界隈のSNSでは有名人だったので、僕自身彼のnoteをよく読んでいました。「あの野村さんからメッセージが来た!」と、話だけでもしてみたいという気分でしたね。

代表野村から届いたYOUTRUSTのスカウトメール

また、スカウトは他の企業の方からもいただいたのですが、特に野村のメッセージには「一般的なインサイドセールスの型に囚われず、自由な発想で新しいリード創出の方法を模索できる人を探したい」とあり、その視点がとても刺さりました

インサイドセールスの求人は、インサイドセールス職を極めるタイプの募集が実は多いんです。THE MODELでの役割分化の結果、そういった求人が多いのだと思いますが、自分は話した通り「幅を広げ、事業貢献を感じられるポジション」を求めていたので、ピンと来ていませんでした。でもRightTouchは、メッセージからもその違いを感じられました。インサイドセールスを軸に、他の職種や業務に携わっていくことや、電話だけでなく様々なアプローチを模索できそうというイメージが持てたことも、興味をそそられたポイントです。

——タイミングよくokkunさん自身の希望とRightTouchの方針がマッチしたんですね。入社を決めた要素も知りたいです。

大きくは3つあります。

ひとつは柔軟な思考性を持つ、RightTouchの「ひと」です。初めて野村と会ったときに「プロダクトとマーケットが圧倒的に重要」と話していたことが印象的でした。野村のように営業畑で確固たるキャリアを築いた人は、プロダクトやマーケティングに興味や知見が薄いイメージを漠然と持っていました。ですが、そんな彼の見据える先が「営業以外」のことだったのが、個人的にすごく響いて。受注・売上といった足元のことだけでなく、顧客やその先にいるエンドユーザーに価値を届けるために、職種や役割を超えて柔軟に動き方や考え方を変えられる環境が、感覚的にとてもいいなと思いました。

もうひとつは「カスタマーサポート」というマーケットの大きさを初めて知って、素直に心が踊ったことです。前職のサービスはBtoBマーケター向けだったので、市場のニッチさも営業をするなかで感じていた課題でした。対して、カスタマーサポートは最初こそ何も知らないと思っていましたが、聞けば聞くほど誰しもが経験したことがあり関係がある領域で、なのにプレーヤーも少ない稀有な市場。現時点での市場規模も、約1.5兆円と非常に広大です。(詳しくは代表・長崎のnoteへ)限られた市場でのシェアを高めるアプローチではなく、市場そのものを興しさらに大きくしていくという、全く異なるアプローチが求められているように思い、これは社会に大きなインパクトを与えられるサービスだぞ、と感じました。

最後に「立ち上げ」というワード、フェーズにも惹かれましたね。当時はビジネスサイドが3人ほどしかいなかったので、THE MODEL的な組織は人数的にも作れず、別のアプローチを取らざるを得ない状況でした。ですが、個人的にもTHE MODELを超える別の型をつくることに挑戦してみたい気持ちは強くあり、人数が少ない分やれること、やらねばいけないことがたくさんあることに、むしろワクワクしました。

また後押しになったのは、プレイド発のスタートアップだということ。知名度や資金面の観点に加え、特にプレイドが抱える顧客基盤、データ基盤も活かしたセールス・マーケティング活動ができるのは、このフェーズでは相当な優位性・強みになる確信がありました。

コンパウンドスタートアップで顧客開拓もプロダクト開発も可能にする「事業開発セールス」という役割

——改めてRightTouch入社後どんな業務に取り組んでいますか?

最初は、自分の得意なところから始めて成果を出そうと思い、まずはインサイドセールス立ち上げに従事し、アポイントを供給する仕組み作りを最初のミッションに置きました。

といいつつも、人数が圧倒的に不足していたので、必然とセールスやマーケティングにも染み出していきました。実はどれも未経験でしたが、なんとか食らいついてキャッチアップしていきました。

——インサイドセールスを軸にしながら他の職種や業務にも横断していくというのはokkunさんの理想だったと思いますが、いざ実際にやるにあたって初めてのことに不安はなかったのですか。

ガンガンやりたくてJoinし、実態を見てガンガンやらないといけないなと思っていたので、不安はなかったです。これは本音です。既存メンバーの積極的に巻き込んでくれる動きもありがたかったですね。

——入社当時は3人ほどのビジネスチームでしたが、現在はどんな規模や特徴になっていますか?

今は、18人ほどの規模になり、事業企画や新卒採用経験者、研究職出身などさまざまな経歴・バックグラウンドを持つ人がチームに集まってきています。

特徴でいうと、機能や業務に対して担う人が流動的で越境しているところでしょうか。セールス・マーケティングといった担当する主な機能と、業界はさっくりと決めていますが、状況に合わせて得意な人を必要な機能に配置しています。自分もマーケティングをやるときもあれば、営業をやるときもあります。例えば、開拓の型ができてきたマーケットは野村が、新規マーケット開拓は僕がといった分担をするなどしています。

最近は、特に自分のような動き方をしている人を「事業開発セールス」という役割で呼ぶようにもなっていて。RightTouchは、コンパウンドスタートアップとして大きな価値を生む事業のタネやそれを仕掛ける機会を常に探しています。そしてそのタネは、リファレンスカスタマーだけでなく、インサイドセールスやマーケティングが日々向き合っている、未来の顧客候補からも得られるもの。すぐに売上や商談に繋がらなかったとしても、新たな市場を探索する動きに価値があるという意図のもと、私たちのような横断的な役割があります。THE MODELのような分業による効率化ではなく、機能を流動化し重なる部分を意図的に作り出して、次なる市場の探索をセールスが行うことができるのは、他の組織にはないRightTouchならではの特徴だと思っています。

——まさに横断的な働きができるチームですね。越境しながらチャレンジしていけるチームの背景には何かあるのでしょうか?

チーム全員が徹底的に顧客に向き合おうとしているから、じゃないかなと。顧客そしてその先にいる生活者が抱える複雑な課題を解決するには、一人の力では難しく、多岐にわたる専門性を持ったプロフェッショナルが、お互いの強みを理解し、スキルやナレッジをシェアしあいながら進めていくことが欠かせません。

共同代表の2人を例に挙げると野村は顧客のプロですし、もうひとりの長崎は戦略のプロ。他にもたくさんのプロがいて、いろんなプロに相談しながら進められるんです。その分自分の視点も、ぐいっと引き上げられるんですよね。

また、それぞれが高い専門性を持っているにも関わらず、「誰にも何も教えたくない」ではなく、自分が持っているスキルや経験、ノウハウを常にチームに還元し、民主化しようとしているのがRightTouchでは当たり前なんですよね。

「遠くに行きたければ仲間と一緒に行こう」というカルチャーなので、結果、個々人と組織のケイパビリティが職種や役割に囚われず広がっているんだと考えています。

——okkunさん自身が、RightTouchに入社してから広がったケイパビリティや成長を感じることとして、どんなものがありますか?

顧客と長い時間をかけて深くディスカッションをできるようになったこと、顧客との会話をもとに新たなコンテンツや施策を生み出したり磨いたりできるようになったことですね。

とあるエンタープライズ企業の方と2023年の12月からお付き合いさせていただき、累計100時間ぐらいディスカッションさせていただきました。顧客の業務課題を深く知り、その解決に一緒に取り組むことができましたし、その方との話を起点にマーケティングやセールスに活用できるコンテンツや施策アイディアが生まれました。この出会いはすごく勉強になって面白い経験でした。

——アポ獲得数だけを追いかけていたときとは全く違う世界線ですね。

まさにそうですね!お客さんと会って深めて支援をして、その内容をコンテンツにして、他の市場や顧客に広げ、事業に貢献していく。このサイクルを作れるようなチャレンジをしたいと思っての転職だったので、一定の成果や手応えを得られているいま、RightTouchに飛び込んで本当によかったと思います。

——RightTouchは、攻略難易度が高いとされるエンタープライズに対しても市場を広げ、さらに「遠くに行こう」としているのを感じます。エンタープライズ戦略を、今後どう進めていこうとしているのか、お聞きしたいです。

事業戦略として、エンタープライズ顧客に対してコンパウンド型でビジネスを展開しようという方針は決まってます。業界としては、noteでまとめた「演繹的ターゲティング」手法に基づき、これまでは定量的な市場規模から、特に金融・通信業界の皆様との取り組みを強く推進してきました。

ここからは「帰納的ターゲティング」をさらに加速させ、今は接点のない企業や業界から未来の顧客候補として関係を作っていく動きが一層重要になります。アポイントのログやデータ、またメンバー間でのコミュニケーションから、白地のある業界・顧客・生活者への解像度を高め、それらに適した新しいやり方セールスしていく強いチームを目指したいですね。

ターゲティング手法論などについての詳細は、このnoteに詳しくまとめています↓

事業成長、そしてその先にある社会への貢献をより高めたいと燻っているSaaSセールスの方にこそ、RightTouchを知ってほしい

——okkunさんから見て、RightTouchらしさを感じるのはどんな時ですか?
RightTouchの人たちって「解きましょう!」「それ解きたい!」「これ解けるの?」って言うことが、ものすごく多いんですよ。Issueドリブンを体現している人たちというか、「本質は一体何だろう?」と考えるのが好きで、本気でコト・モノに向き合っているのが、日々の言葉や行動に表れているのを感じます。

あと、既に話した「スキルの民主化」にもつながると思うのですが、RightTouchの人は本当にフラット。例えばつい先日、野村が僕に「クロージングってどうやってやってるの?」と聞いてきました。20年近く現場を張っている野村に自分の経験を話すのは恐れ多い気持ちも正直あったのですが、年齢や役職関係なくフラットに興味を持って、ナレッジをシェアしあうことに喜びを感じる人ばかりなのは、らしさを感じる瞬間ですね。根底にある、組織も社会も良くしていきたいというピュアな気持ちが共通しているからだと思います。

——RightTouchがあってると思う人はどんな人ですか。
自分の職種や業務内容にかかわらず、「今の事業の成長に必要なものや必要なことって何?」を自分の頭で考え、それを即座に行動に移すことに違和感がない人、ですかね。

THE MODELを通じて営業プロセスは細かく分割され、インサイドセールスをはじめとした新たな職種が生まれ、広まってきたと思います。ただ、RightTouchが軸にしているのは「顧客とその先にいる生活者に価値を提供する」こと。価値を提供するために未経験のことや主担当でない業務が必要だとなった時にも、「経験がないのでやりません」ではなく、「できるかわからないけど、まずはやってみます!」という動きができる人は、RightTouchの環境はすごく心地よいと思います。僕自身が常にそうありたいという理想でもありますね。

また、THE MODELが組織的に強く根付いていた前職の経験を通じて、職種・役割が細分化する利点だけでなく、課題や閉塞感を感じる機会も多くありました。今、SaaSビジネスやTHE MODELをもとに作られた組織・チームで働くなかで、自分の役割に対する不安や違和感を感じている人にも、役割の越境が推奨されるRightTouchのチームの話を一度ぜひ聞いてみてほしいですね。逆に「決められた職種・業務の範囲だけやりたい」という人には、求められる越境レベルが高いので、ギャップを感じやすいと思います。

——最後に、okkunさんが今後チャレンジしていきたいことを教えてください。
「爆発的なインパクトの創出」をセールスにおいてもマネジメントにおいても突き詰めていきたいです。

今の自分は、どちらかと言えばn=1を繰り返して抽象化するのが得意。逆に1対Nのような、1つの圧倒的な成果を作って、そこからマクロに対してインパクトを出していくことにはまだまだ課題があるので伸びしろだと捉えています。

チームに対する自分の役割という点でも同じで、チームを率いて一人では出せない大きな成果を出すとか、より大きなインパクトをチームに与える存在になるためにどう動くかも、自分の成長ポイントだと思っています。マーケットや組織の成長ポテンシャルがあるからこそ、1+1が2よりも大きくなるように、チャレンジを続けていきたいですね。

(ライター/成田 愛恵 取材・編集/緒方 祥子)